TLCカタログ
4/24

ab2Rf値(Retention Factor)=サンプルスポットの移動距離(a)溶媒フロントの移動距離(b)溶媒フロントサンプルスポット原点薄層クロマトグラフィー(TLC)概要はじめに薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography)の基本的な原理は約100年以上前から存在していますが、幾度となく発展ステージを経て現在に至っています。TLCはパワフルな分析手法として、年々高い評価を得られるようになっています。長い間、最も便利で直接的なクロマトグラフィーの一手法として位置付けられてきましたが、新しい吸着剤や支持体が開発された結果、低コストのメソッドとして成長し続けています。TLCでは、サンプルの一定分量を吸着剤の多孔性層の表面にスポッティングします。スポッティングされたサンプルに含まれる各成分は移動相(展開溶媒)によって吸着剤の表面を移動し、それぞれ異なる距離を移動して個別の成分に分離します。移動相(展開溶媒)は吸着剤の中を毛細管現象によって自然に移動するため、外部から圧力をかける必要はありません。最も優れたTLC分離媒体は、濃縮された吸着剤粒子のスラリー(懸濁液)を、平坦な支持体に均一な厚さの層のように塗布されることによって生成されます。支持体には通常ガラスを使用しますが、アルミニウムやプラスチックも使用されます。スラリー溶媒を丁寧に散布することで、均一な厚さの吸着剤の層が完成します。支持体となる材質は、吸着剤の薄層を塗布する不活性な土台となるだけでなく、薄層の取り扱いを容易にします。原理上、様々な吸着剤をTLCに使用することが可能ですが、実際には汎用性の高いシリカゲルがTLCの吸着剤として一般的に広く使用されています。TLCの手順1. サンプルの準備(前処理)このステップには、Dr. Joseph Touchstoneの言葉を借りるなら“favorably increasing the analyte/ʻjunkʼratio”『分析成分と不純物の比率を好ましく増加させる』ことが含まれます。最も重要なのはサンプルをクリーンアップすることのように思えますが、サンプルを物理的に壊すことも必要となるでしょう。他にも、サンプリング、抽出、目的成分のろ過や濃縮もこのステップには含まれます。徹底的にサンプルを前処理することが、TLC分析を成功させるためには不可欠です。2. サンプルの添加一般的に、クロマトグラフィーの分離をどのようにさせたいか、その目的によってサンプルの添加方法が決定します。最も多いのは、ガラス製のキャピラリーを使用して添加する方法です。キャピラリーを使用して円形にスポッティングしたり、より小さな密接したスポットを繋げてバンド状にスポッティングします。もっと長く、一本の筋としてバンド状にスポッティングする方法は分取用の厚いタイプのTLCプレートの場合に限られます。分解能を最大にするためには、サンプルスポットやサンプルバンドは出来るだけ小さくしてください。濃縮ゾーン付き(詳細はp.7参照)のプレートは、手作業でのサンプル添加が容易になりますが、特に大量の希薄なサンプルを添加する場合に適したプレートです。3. クロマトグラフィーの展開最も頻繁に使用される分離手法は、TLCプレートをガラス製の展開槽の中に垂直に立てて行う『上昇法』と呼ばれる手法です。また、特殊な水平構造の展開槽を使用する場合(『水平法』)もあります。これらの展開法では、溶媒は毛細管現象によってプレート上を流れて移動しますが、分離速度は重力に余り影響を受けません。もう一つの特殊な手法は『二次元展開法』と呼ばれ、スポットを一つだけプレートの角付近に添加します。通常通り一次展開が完了したらプレートを乾燥させ、次にプレートを90℃回転させて、別の移動相を用いて第二方向へ展開させる手法です。4. クロマトグラムの評価UVライトを照射してそれぞれの成分が目視できる場合には、それを見て確認するだけなので簡単ですが、目視できない場合には、試薬をプレートに噴霧して加熱した後にデンシトメーターでスキャンします。それを標準物質と比較してようやくプレート上の成分量を正確に測定することが可能になります。評価で必ず行うことはRf値(Retention Factor)の算出です。この値は、サンプルスポットの原点の移動距離を、移動相溶媒フロントまでの相対距離として測定されます。他の全ての変数が一定に保たれている限り、サンプル成分のRf値は常に同じ値となり再現が可能です。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る